28.「いいおしりにはいい排便」まとめ

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長々続いてきました連載「いいおしりにはいい排便」は、これで終了です。
長くなったのでポイントがボケたのではないかしら。

まとめておくと、

1.便は回数(だけ)じゃなく出るときにラクかどうかを基準にしよう。

2.良い便は固さが練り歯磨き~バナナくらいで、スッキリ気持ちよく出る便。

3.便の回数が少ない人は「非水溶性食物繊維」を摂りましょう。

4.便の出始めが固かったり、コロコロ便の人は「水溶性食物繊維」を摂りましょう。

5.便を軟らかく滑りよくするためには、「水」と「植物性油」が大切。

6.薬を使うなら「下剤」じゃなくて「軟便剤」から。

7.アロエ・センナ・ダイオウは「下剤」。クセになりやすいので緊急時のみ使用しましょう。

8.気になることがあれば大腸内視鏡検査を受けよう。

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以上です。 長々とおつきあいありがとうございました。

27.「形態異常」についての検査方法

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「形態異常」に関しては、内視鏡よりも「注腸検査」の方がわかりやすいようです。

これはおしりからバリウムを入れて腸の形をレントゲン写真に撮して見るという検査ですね。 ガンなどの手術の前には、ガンそのものの形や、細胞の検査(生検:ガンでもその細胞によっては小さいうちにより転移しやすいもの、転移に時間がかかるものとがあるのです)を内視鏡で行うのと同時に、そのガンが実際にお腹の中のどのあたりにあるのかなどを注腸検査で確認しておかなくてはいけません。 内視鏡ではおおまかな部位(直腸とかS字結腸とか)はわかっても、腸の長さや形は人によってさまざまです。特にS字結腸は、ホントに全く様々な長さや形があり、ガンの位置によってどこを切ってどこを繋ぐのかを、手術の前に予想・予定しなくてはいけません。body_chou_good.png

時には、「内臓逆位」という右に心臓があり、左に肝臓があるという人もいらっしゃいますから、こういう場合でも注腸検査を行うことで手術のイメージが非常にしやすいのです。

また、ある意味ガン以上に注腸検査が役に立つのは、「憩室」という状態の診断と治療です。 あえて「病気」と言わず「状態」と表現するのは、「憩室」それ自体は困ったものではないせいです。これは、腸の筋肉の一部が小さく断裂し、その部分が薄く弱くなっていて、圧力が加わると外側や内側にペコッっと引っ込んでポケットみたいになっている状態です。

生まれつきや加齢、過伸展などで起こると考えられ、70代になると1割以上の人に見られるといわれる、ごく普通の変化です。 ただ、時にそこに便がはまりこんだりして炎症を起こすと「憩室炎」といって、腹痛など虫垂炎そっくりの症状を起こしたりします。虫垂炎(盲腸炎)だと思って手術に入ったら憩室炎だったということもあるくらいです。

また、何らかの原因でその部分の血管が破れやすくなって、突然出血を繰り返す、ということもあります。 この「憩室」、内視鏡で見るとポコポコと落とし穴があるように見えることが多いのです。注腸検査では、そのポケットにバリウムが溜まって写るので、個数や位置、ポケットの形が非常にわかりやすいんですね。

また、時にポケットが裏返るように腸の中の方へでっばって、まるでポリープみたいに見えることもあるんです。 内視鏡だけとか、注腸検査だけでは、そういう見間違いだけでなく、ガンやポリープの見落としといったこともあり、危険度が高い方では両方行うのが理想ではあります。

26.続続・大腸炎の原因と治療法

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さて、ガンやポリープ、その他ほとんどの腸の病気では対処法・治療法はほぼ確立されていますが、ある意味、もっとも治療に難渋するのが「IBD:炎症性腸疾患」です。

主に消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎 、クローン病 の二疾患からなります。 「胃潰瘍」という病気がありますが、IBDは、「炎症によって腸に潰瘍ができる」という病気です。日本では昔から胃潰瘍は多かったんですが、IBDは少なかったので、まだまだ一般の認知度は低いのですが、最近非常に増えている病気です。

もともとが「炎症」ですから、肺炎や気管支炎と同じように薬での治療(内科的な治療)が基本です。しかし、出血が止まらなかったり、潰瘍が深くなって腸に孔があいてしまったり、炎症を繰り返したところが固く狭くなって便を通さなくなってしまうと、手術をしなくてはいけないこともあります。

monshin_women.png症状としては、潰瘍性大腸炎の特徴は「下血」です。ひどい場合は下痢や腹痛・発熱を伴う場合もありますが、軽いものもたくさんあって、むしろ便秘の方もいらっしゃるくらい。なので、自己判断は難しいですね。一般にこの病気は、肛門の近く(直腸)が一番ひどいことが多いので、肛門科できちんと診察を受けるだけで発見されることもかなりあります。

慢性の病気とはいっても、潰瘍性大腸炎の場合はきちんと治療を受ければ一生再発しない人もいますし、軽い場合から重い場合まで、千差万別です。排便に少し血が付くだけの人から、腸全体に及ぶ人、また劇症型といって突然ひどい症状をおこし、緊急手術になる人までいます。そのほか、大腸以外の症状(関節痛や皮膚・目の異常など)を伴うこともあります。 潰瘍性大腸炎は、軽いものであればほとんど日常生活を阻害しないことも多いのですが、炎症を放置するとそこから大腸ガンが発生することもあり、またその大腸ガンも、通常のガンとは違って炎症と見分けが付きにくかったりします。

ですから、症状が軽くても放っておかずに、きちんと専門医で経過観察をし続けることがとっても大切です。 クローン病の方は、主な症状は「下痢・腹痛」です。出血はあまり認めません。 こちらは、腸とは限らず、口から食道・胃・小腸・大腸・肛門までの消化器官全てに症状(潰瘍)がでることも珍しくはありません。多いのは、小腸と大腸のつなぎ目あたりの炎症で、早期の場合は何にも症状がなく、腸の検査でたまたま発見されることもあります。

また、「痔ろう」という肛門の周りに膿がたまるトンネルができる病気がありますが、クローン病の始まりが「痔ろう」ででることもあります。この場合、すぐに検査してもクローン病がわからないこともあり、痔ろうの治療をしていくうちに腸にもクローン病がはっきりしてくるということも結構あります。iryou_jujisya_jimu.png

なので、ちょっと普通と違う痔ろうを見つけたら腸の検査をするというのは肛門科の常識だったりします。 軽いものでは症状が出ないで終わってしまう場合もあるようなのですが、ひとたび症状が出始めると治療が難しいこともあり、その時々の症状を軽くしながら「付き合っていく」というのが今までの現状でした。

もともとが「原因不明」ですから、腸が狭くなって便が通らなければその狭くなったところを切り取ったり、痔ろうで膿がたまって痛ければ、膿がたまりにくいように出口をたくさんつけておく、などです。 最近はかなり効く薬や治療法もでてきていて、以前よりもQOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)がかなり良くなってきてはいます。生活の欧米化に伴って増えてきている病気であり、今後の更なる治療の発展が強く望まれます。

25.続・大腸炎の原因と治療法

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腸炎の話はまだ続きます。 最近増えている印象があるのが、アメーバ赤痢です。下痢はあまりしないんですが、粘液性の出血が特徴です。

これは寄生虫なので、アメーバのついたナマモノを食べることで感染すると考えられます。調理の際に食材にアメーバがついたり、アメーバのいる便を肥料にした野菜などが原因として考えられるため、海外での感染が多いんですが、最近は、ルートはよくわからないけど(性行為でも感染するとも言われます)増えている地域があります。

寄生虫ですから、発見されれば薬が効きます。しかし、きちんと治しておかないと、アメーバが腸から胆管をさかのぼって肝臓に入ったり、もちろん人にうつす可能性もあります。数日以上続く粘血便があれば必ず胃腸科、消化器科を受診して下さい。 あと、腹痛と多目の出血を伴う腸炎では、「虚血性大腸炎」というのもあります。腸への血流が何かの理由で一時的に途絶えてしまい、酸素が届かなくて腸炎となった状態です。中年以上の人に多く、何らかの理由で血管の攣縮(れんしゅく)が起こることが原因ではないかと考えられています。

body_chou_bad.png大抵は一過性で、血流が回復すると治ることがほとんどです。しかし、血流低下が長引くと腸炎から腸壊死におちいったり、腸炎部のバリア低下で細菌が体内に侵入してしまったりということもあります。腹痛と下血、両方がある場合は早く診断し早く治るようにしなくてはいけません。

この他、出血する腸炎の特殊例としては、前立腺や子宮・卵巣など骨盤内のガンなどで、放射線治療を受けたあと、しばらくしてから直腸炎が起こってくるものがあります。出血以外には症状はないことが多いのですが、少量でもなかなか止まらなくて貧血をおこすこともあります。
この腸炎の場合ははじめの病気の時に説明されていることが多いので、そちらでちゃんと相談しましょう。


さて、腸炎も大詰め。次回は肛門の病気とも関係の深い IBD = 炎症性腸疾患。潰瘍性大腸炎とクローン病です。

24.大腸炎の原因と治療法

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排便と腸の病気との関連の続きです。 大腸炎は、様々な要因で起こります。ウィルスや細菌、寄生虫などによって起こるもの、放射線や薬によって引き起こされるもの、血流異常によって起こるもの、原因不明なものなどがあり、原因によって治療法が変わります。

大腸炎では、多くの場合で下痢を伴います。細菌など炎症の直接原因になるものや、炎症反応で生じた異物や物質を洗い流し身体の外に排出しようとする働きが強まるためで、肺炎や気管支炎の時にタンが増えるのも同じ理由です。ですから、そういう場合では、下痢やタンは無理に止めてはいけないんです。 タンのない咳や、腸が動きすぎる場baikin_genki.png合の下痢ではそれを止める咳止めや下痢止めの薬を使います。

でも、炎症の原因や不要物質があるのにそれが出ていくのを止めてしまったら、治るものも治らない訳なので、そうすると、その大腸炎の原因をはっきりさせることが大切です。
排便の回数が1日に5回以上になるほどの下痢となると、一時的なものではウィルス性がよく見られます。冬に特によくみられるロタウィルスやノロウィルスが代表的です。ノロウィルスは何年か前にかなり流行って話題になったのでご存知の方も多いかもしれませんね。
ウィルスですから直接効くような薬はなくて、脱水に注意しながら体力の回復を待ちます。稀に、老人などで抵抗力が落ちていると生命の危険を生じます。

ugai_woman_garagara.pngですから第一は予防で、手洗いとうがい。インフルエンザと同じように考えて下さればいいでしょう。 細菌性ですと、やはり一時大きな話題になったO-157や、そこまで毒性は強くなくはない病原菌感染(食中毒など)があります。細菌だから抗生剤がいいかと言えばそうとも限らず、一部の病原菌では、菌が死ぬと中の毒素が出てきてかえって症状が悪化したりします。

ですから、病原菌を身体の外に早く追い出してしまうことが一番なんです。 ちなみに、抗生剤を飲むと腸の中の悪玉菌、善玉菌ともに減ってしまいます。しかし、腸の正常な細菌叢が崩れると普段なら増えることのない細菌が増えて腸炎をおこすこともあります。

そもそも善玉菌がいないと身体の抵抗力は著しく低下するため、いろんな病気を引き起す元にもなるのです。 また、薬剤そのものによる腸炎もありますから、お腹をこわして病院にかかるような場合は、飲んでいる薬があれば必ず申告して下さいね。

23.ポリープやガンなどの腫瘍が見つかったら・・・ 

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大腸内視鏡検査でわかることは、

  • ポリープやガンなどの腫瘍(できもの)
  • 大腸炎などの炎症
  • 形態異常(症状のない憩室など)
  • 色調変化 (下剤を長く常用していた人に起こる、メラノーシスという腸が黒くなった状態など)
  • 圧力センサーを使っての機能検査など (まだごく一部の病院でしかやってません)
  • 異常がないこと

この連載は「排便」について語ることを主な目的としていますが、ポリープやガンなどの腫瘍(できもの)で排便に支障が起こるようになってくれば、それはかなり大きくなってからになります。たかだか2センチくらいのガンでは、よほど肛門に近くない限り、まだ排便にはほぼ影響がありませんからね。早期発見が一番の治療という意味では、排便症状が出た時には遅い、ということになります。 monshin_women.png

ちなみに、ポリープやガンなどの腫瘍の治療の基本は切除、つまり切り取ることです。ポリープと言われる形のうちは、ポリープだけを切り取ればいいので内視鏡で切除・治療が可能です。

それがガンになると、目に見えるガンだけではなく、ガンが進んでいそうなところまで切り取らなくてはいけません。腸の表面に近いところだけのガンなら内視鏡で全部取りきれることも多い。しかしそれが、腸の壁や血管、リンパ節までいってしまっていれば、そこまで全部切り取る大がかりな手術になります。

場合によっては取りきれないということもありえますし、悪性のタイプによってははじめから抗ガン剤などの治療が選択されることもあります。 最近大腸ガンによく効く抗ガン剤治療法も出てきてはいますが、いずれにせよ大腸ガンの治療は「小さいうちに見つけること」が最良ということになります。

ぜひ、チャンスがあれば内視鏡検査、受けておきましょう。 そういうわけで、多くの方はポリープやガンなどの腫瘍ばかりを考えがちで、もちろんそれは当然なんですが、実は大腸炎などの炎症の中にも重大な病気があります。

22.実際の大腸内視鏡検査のやり方

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大腸検査の必要性・重要性をご理解いただいたなら、次は実践編。

大腸内視鏡検査は、おしりからカメラ(内視鏡)を入れて、大腸の一番奥(盲腸・バウヒン弁)まで挿入し、大腸全体を観察する方法です。 ※バウヒン弁は小腸から大腸に入ったもの(便)が小腸に逆流しないようになっている部分で、ここよりも奥へ入ると小腸です。ですから大腸検査とはいっても、必要であればこの小腸の出口付近までは観察することもできます。
胃の場合は朝食を摂らないだけで検査ができますが、大腸の場合は、まず大腸の中の便を全て出して、からっぽにしなくては検査ができません。

大腸をカラにするには、検査当日に腸管洗浄液(ニフレックなど)を口から飲んで、腸の中のものを水道を流すように押し流してきれいにする、という方法が一般的です。ただし、このためには約1.5リットル、場合によっては2リットル以上の洗浄液が必要になります。 また、大腸洗浄液の欠点は、万一腸にねじれや狭くなっているところがある場合に、上からどんどん押し流そうとすると、その狭くなったところを通らずに手前がどんどん膨れていってしまうという可能性が否定できないことです。medical_daichou_naishikyou2.png

ですから、そういう狭い状態が予測される場合には腸管洗浄液を使えない、ということもあり得ます。 腸管洗浄液が使えない、またはそんなに水分を飲めないという方には、前々日くらいから下剤で腸を空っぽにしていき、前日は腸の中の残渣を残さない食べ物を摂り、当日何度も浣腸をして腸の中をキレイにする、という方法もあります。
しかし、浣腸液は1メートルも先の腸には届かないこともあり、上から押し流してキレイにする方法に比べると少し残渣が残る傾向があります。

腸をきれいにしたら、恵仁会グループの病院ではほとんどの場合検査の直前に鎮痛・鎮静剤を静脈注射します。これは、大腸は1メートルもあるので、いくら検査医師が上手でも痛みが起こることがあるためです。


このように一度、痛い・苦しい思いをしてしまうと、もう二度と検査を受けたくないと思ってしまいます。 ポリープ(ガンも)は、小さければ内視鏡で切除できるはずだったのに、検査がいやだと思っているうちに進行し、大きくなってしまうと手術でとらなきゃいけなくなってしまう。もちろん転移やいろんなリスクも高くなります。

はじめから検査で痛くなりそうな腸かどうかが判ればいいんですけどね。そういうわけにもいきませんから、恵仁会グループの病院ではよほどの問題もしくは希望がない限り、初めから鎮痛剤を使うことにしているのです。

ですから、初めての方の多く、何度も受けている方でも薬がよく効く方では、眠っているうちに検査が終わってしまいます。「ホントに検査したんですか?」とおっしゃる方もいるくらい。
まぁ、実際に検査にかかる時間は、当クリニックの場合だと10分くらいが平均ですしね。何もなければあっという間です。
※ちなみに、恵仁会グループの大腸内視鏡検査は年間2万件以上と日本一(ひょっとしたら世界一かも?)の件数を誇ります。

で、検査結果を聞いて、何もなければ「ハイ、お疲れ様でした。次回の検査はいつ頃受けるといいですよ」というアドバイスをもらって帰ることになるわけです。

21.大腸ガンの検査とは?

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大腸検査は、以前は

1.便潜血検査 → 2.注腸検査(バリウム検査) → 3.大腸内視鏡検査medical_daichou_naishikyou2.png

の順に進めていくことが推奨されていました。でも、最近は

1.便潜血検査→3.大腸内視鏡検査
または初めから
3.大腸内視鏡検査
というパターンが増えています。


1の便潜血検査に関しては、最近は随分感度が良くなってますが、やはり疑陽性、偽陰性という可能性は否定できません。

20.大腸ガンは早期発見が大切!

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いつだったか、例の「○○○の本当はコワイ...」の最後に「大腸ガン」が出てきました。 例によって「危険度診断」がありました。

  • 出血がある
  • 便が細い
  • 何度もトイレに行きたくなる
  • 便秘・下痢を繰り返す
  • 貧血・立ちくらみがする

一個でも該当すると大腸ガンの危険性が高いので、大腸検査を受けるべきです、という診断でしたが、確かにこの症状は、大腸ガン、特に直腸ガンのほとんどでみられる症状です。また、番組に出てた20代?の全員が、何らかの症状がありました。でも、更に言うなら、おしりから血が出たことない人、便が細くなったことのない人って、どのくらいいるんでしょうね?

つまり、どの症状も、痔をはじめ他の病気(体調)でもよくみられる、ごくありふれた症状だってことです。 私としては、この内容には異存はありませんが、それぞれの項目にひとことを付け加えるべきだと思ってます。「いつも・毎回」、または、「だんだんひどくなる」という言葉ですね。 ほんとに「ガン」や「ポリープ」であれば、出血がたまにあるとか、たまに便が細くなるなんてことはなく、「毎回便に血がつく」、「いつも細い便しかでない」、はずなんです。
もっというなら、「出血がある」はともかく、「便が細い」、「何度もトイレに行きたくなる」に関しては、そこまできていれば、早期ガンではなく進行ガンの可能性が高いかもしれません。job_doctor_woman.png

ただ、「ガン」、特に「大腸ガン」に関しては、早期発見すれば、80%以上の確率で治るのではないかと考えられています。 というのも、大腸ガンは、最初からガンであることは少ないんですよ 最初はポリープの形で出てくるものが多くて、ある程度のサイズになると中にガン細胞がまじってくる。

そしていつか、全部がガン細胞に置き換わる「大腸ガン」になるわけで。逆に言えば、「ポリープ」のうちに取ってしまえば、100%に近い確率で治るんですよね。 「症状が出てから」では、もう進行ガンになっている可能性がある。でも、症状が出る前、ポリープの段階で見つければ、なんと、大腸ガンは予防できるかもしれないってことなんです。

だから、私たち肛門科医は、言うんです。 「せっかくこういう病院(肛門科)にがんばって来たんだから、もうこの機会に大腸検査しておきましょうよ」ってね。 たまに血が出るとか、たまに便が細くなる、という程度でガンを思いつめる必要はありませんが、それをきっかけに検査を受けることで、まだちっちゃいガンやポリープが見つかるかもしれない。それで、上手くいけば、カメラで取りきれちゃうかもしれないんです。

同じ日の夜中に、某番組で、やっぱり大腸ガンの話をやってました。大腸内視鏡の専門医が、何とか人工肛門にならないような手術をした、というドキュメンタリーでしたけど。 大腸ガンのイヤな点は、そのおよそ半数が「直腸」、つまり肛門のすぐ近くにできるってことです。だから、大きくなってからだと手術で「人工肛門」をつけないといけなくなるわけで、それに対する恐怖心が一般の方には非常に大きいと思われます。「大腸ガン」と聞いただけで「人工肛門」と思っちゃう方もいらっしゃるくらいです。

でも、だからこそ、症状が強くなってからでは、おっきな手術をしなきゃいけなくなるからこそ、大腸ガンは、早期発見がもっとも大切です。
また、それがかなえば「治せるガン」である可能性がとっても高いんです。 みなさま、チャンスがあればぜひぜひ内視鏡検査をお勧めします。
ツラくないですよ。次回はその話の予定です。

19.医学は元々経験則から生まれてきた学問

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よく、胃の調子が悪くて下痢している、という言い方をしたり、風邪でお腹を壊すと「胃腸炎」なんて言われたりしますが、いささか乱暴な・・・というかおおざっぱな分類だな、と思ったりすることはあります。nigaoe_kitazato_shibasaburou.png

なんで胃が悪くて下痢?
胃腸炎って検査もしてないのになんでそんなことがわかるの?
しかも、胃も腸も両方炎症おこしてるわけ?
なんて、このあたりの話やあと「胃けいれん」とか、曖昧で便利な病名や状態をあらわす言葉について重箱の隅をつついても仕方ない訳で。

確かに、ちょっと胃の辺りがむかついたり痛かったりするくらいでいちいち胃カメラしてたらキリがありませんものね。
胃炎も腸炎も、今はカメラで見て確認して「こういう状態をナントカ胃炎という」って決まりは一応あるんです。


私も昨年胃の具合が悪くて胃カメラ受けましたけど、「綺麗な胃ですね。何でもないですよ」ということでした。
確かに、我ながらキレイな胃粘膜でしたけど(笑)、カメラで見て何もなくたって痛いもんは痛いですしね。

目に見えるものだけで「あなたには検査で異常がないんだから薬はあげられません」って言われても困る。

何が言いたいのかというと、目にみえるものだけを医療の基準・根拠にしすぎてはいけないなということです。
医学は元々経験則から生まれてきてるわけで、早い話、風邪を「風邪」と確定診断し証明する方法はないんです。

曖昧で、ファジーな部分は医学・医療からなくならない、無くせない。それでも一つ一つ、こういう状態を「胃潰瘍」、こういうものが見えたら「クローン病」、血液検査でこれがあれば「リウマチ」って積み重ねて、何とか客観的な形にしようとし続けていかなくてはいけないのも医学。

お腹がはる、便秘・下痢を繰り返す、排便前にお腹が痛い、という症状があれば「過敏性腸症候群」と診断をつけるのは、臨床的に言えば正しいでしょう。でもそれは、本来は除外診断でしかない。 検査で異常がないことは確認しておくべきで、でないと医学の進歩も望めない。
また、一番怖いのは、「過敏性腸症候群」だから、「常習便秘」だから、また「痔」だからといって、それだけでは「腸に病気はない」という証明にはなっていないんです。